奈良の都に久我大臣の娘で玉津姫というお姫様がいました。玉津姫には顔一面に黒いあざがありお嫁にもらってくれる人が
いませんでした。そこで、三輪明神様(奈良県桜井市)によい縁談が授かりますようにお祈りをしました。
すると、夢の中に神様が現れて「豊後の三重の里に炭焼小五郎という若者がおる。この者と夫婦になれば、末は長者になるであろう」という
お告げがありました。
玉津姫はひそかに都を抜け出して豊後に下り臼杵の港から三重の里の小五郎の所にきました。
自分は三輪明神のお告げで夫婦になるために、はるばる都からやって来たことを話しました。
小五郎は「自分は貧乏でやっと暮らしているありさまで、あなたに食べさせるものもない」と断わりました。
玉津姫はこれがあれば暮らしに困らないからと、都からもってきた黄金を見せましたが、小五郎には黄金の価値がわかりません。
小五郎は黄金を持って食べ物を買いに出かけました。しばらくして小五郎が帰ってきましたが、
手ぶらです。聞くと、下の淵にいるカモに黄金を投げつけたということです。
玉津姫はあきれて、「あれは大切なもので何でも買うことができましたのに」と残念がられました。
「あのようなものは、この山の中や淵に沢山ある」との返事に、玉津姫は驚いて、2人で淵を見に行くと、
そこはまぎれもなく黄金が沸き出す淵でした(金亀ヶ淵)。玉津姫が淵の水で顔を洗うと、たちまち黒いあざが落ちて輝くような顔になりました。
ふたりは、黄金を拾い集め金持ちとなり、真名野長者と呼ばれるようになりました。
長者は仏教を信じて、唐の天台山に黄金三万両を贈ったので、天台山から蓮城法師が観音・薬師の像を持って来ました。
このとき、内山に建立したお寺が今の内山観音(蓮城寺)です。
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